東京高等裁判所 昭和48年(ネ)563号・昭48年(ネ)661号 判決
前記一、(三)の認定事実によると、第一審原告は、芳賀巡査から同行を求められた時点から前記派出所まで連行される間道路上に二回倒れ、そのいずれかの顛倒に因り左尺骨肘頭骨折の傷害を受けたことが認められるが、いずれの顛倒による傷害かは明らかでない。第一回の顛倒が原因であるとすれば、その顛倒は芳賀巡査の行為によるものでなく、第二回の顛倒が原因であるとしても、右顛倒は、芳賀巡査が前記認定の如き状況の下で第一審原告を現行犯として逮捕するため止むことを得ずに払い腰で第一審原告を倒したことによるものであり、右行為は、前記認定の状況に照らし、第一審原告を逮捕する手段として違法性を帯びるほど過剰とはいえないので、これによる損害を第一審被告らに請求することはできないものというべきである。
第一審被告大塚が第一審原告を公務執行妨害、傷害、道路交通法違反の罪名により東京地方検察庁に書類送検したことは、当事者間に争いがなく、右が違法でないことは、前記認定の事実に照し、明らかである。
第一審原告が前記留置中ダイヤビニーズの投薬方を申し出たとの事実につき考えるに、原審証人田中美知子の証言及び原審における第一審原告本人尋問の結果によると、第一審原告は、糖尿病を患い、口中のかわきを止めるためダイヤビニーズ錠を服用していたことが認められるが、前記留置中に右薬を服用しなかったため糖尿病が悪化したことを認める証拠はないばかりでなく、原審における第一審原告本人尋問の結果によるも、右薬を服用しない場合、尿意を催す回数が増えるに過ぎないのであるから、留置中同人申出による投薬が拒否されたとしても右薬を服用しないことによる損害は、精神上の損害も含めてないものというべきである。
(伊藤 小山 山田)